教師のための「教える技術」

向後千春(2014)教師のための「教える技術」(明治図書)という書籍を読んだ。この本は,主として学校の先生を対象として,「教える技術」「授業デザイン力」「クラス運営力」についてまとめた書籍である。

上記したように,その構造がはっきりしている。ゆえにシンプルで非常にわかりやすい,というのが本書の最大の特徴であり,教え方をまず学ぶのにはうってつけだと思う。しかしながらそれでいて,幅広さもある。これは教育工学におけるインストラクショナル・デザインだけではなく,心理学にも精通された著者だからこそまとめられるものである。

インストラクショナル・デザインについては,自分も他の書籍で関わっているので,講義に取り入れるときはその枠組を利用しているが,ティームティーチングで心理学の先生に関わりながら実施する際には特に有用だと思った。

初等・中等教育でのオンライン授業

2020年の10月(以下の記事によると第二波の前らしい)に,教育新聞に以下の記事を書いている。学校でのオンライン授業,そこからどれぐらい進んだであろうか。進めて模索したところがある一方,自校がいきなり考えざるを得ない状況に追い込まれ,慌てて取り組んだがうまくいかない,人が欲しいといったできない理由を並べるところがでてきている。

今第六波がやってきている。この間流行が落ち着いたときは,「今は対面でできるから」といって,そのときに対応を検討せず,同じ状況を繰り返しているところもある。ここまで来ると,おそらく永久にそうした流れは続き,アフターコロナには何も生かされないのだろうなと思う。

当時自分が書いたことに再度目を通してみた。4つのシーンを書いている。現在の地点では(1)はあまり考えられないであろうから,(2)にどのように対応するかであろう。この記事では3日程度と書いているが,今では1日の休みなどもっと短くなり,見過ごしても大丈夫な状況となっている一方,その1日が積み重なり,1週間程度の休校と長くなるところも出てきている。(2)がややバリエーションのある形となってきている。

同時双方向にこだわると難しく,通常授業の発想で取り組んでしまうので,失敗しやすくなると思われる。対応策としては,非同期で,フォームやファイル提出などをやってみるとということからでどうだろうか。課題の素材として,紙の教科書を活用するのも良いだろうし,できればNHK for School等のデジタルコンテンツの活用と連動した課題でもよいだろう。

とにかく一定の時間常に繋げないといけない状況から考えるのはやめたいところだ。ICTによる課題提出等で対応している学校では,それに加えて,クラスを違えながら,同時双方向でつなぐ時間帯を用意し,少しずつ実施している学校も出てきているようである。

https://www.kyobun.co.jp/feature1/pf20201026_07/

大学進学率

この仕事をしていると,当たり前ではあるが周りは大学生や大学をすでに卒業をした大学院生ばかりである。今どうなっているかを見てみると,高等学校卒業者のうち,大学(学部)進学率は54.9%なのだそうだ。令和3年度は,過去最高とのこと。このような数値を意識しておく必要がある。

文部科学省:令和3年度学校基本調査(確定値)報道発表資料(5ページに進学率)

習慣化する

なんと,半年以上も何も書かずに放置してしまった。11月まではJAET全国大会があったということもあるし,12月以降はそこまで外部の仕事を入れないようにしていた仕事が固まってあったため忙しくなってしまった。

今は立て続けに原稿がやってきたため,「書くこと」について考えざるを得なかったが,書くコツは,結局の所,「毎日書く」「常に書く」というところに集約されよう。習慣化することはとても大きく,一回そのルーチンを離れてしまうと復活させるのが難しい。

ということで,ここも少し習慣化できるようにしたい。

オンデマンドコンテンツの準備をめぐって

あるところでオンデマンドコンテンツを作成しなければいけないことになり,この1ヶ月,その内容をどうしたものかと悩みはしたものの,ギリギリに完成させることができた。

個人的には,何らかの対話的な学習と合わせるブレンド学習でないと,オンデマンドコンテンツを与えるのは難しいと,昨年度さらに実感をしたところである。質の高いものを作っているひともいるのだろうけど,私を含めた多くの人には難しいものだと思う。学校現場の研修も聞くところではオンデマンドコンテンツの利用によるものが増えているそうで,こうした流れは長い目で見たときに,ICT活用に暗い影を落としそうだ。

さて,今回のオンデマンドコンテンツの作成に関するオーダーは,完全なるオンデマンド(対面との組み合わせなどの工夫は考えられない)ものであった。時間も決められていた。そこでまず,「学習者が考える時間」を計画的に確保することにした。時間いっぱい,講師が話している映像は見るほうが大変だから。NHK for Schoolでも10分番組なのに,それ以上耐えうる内容で,それより長いものを作れるはずがない。ただし,作ってみると,結構長い時間になったりして,申し訳なく思った。

その次に,対話的な学びをオンデマンドコンテンツでは用意できないので,ゲストに登場してもらい,対話で進めたいなと思った。しかし,そもそも依頼(所属長含めて)や謝金の処理,打ち合わせに膨大な時間がかかると思うと,短い時間の中では諦めざるを得なかった。

その代案ではあるが,受講生に与えた演習課題を先んじてある人たちに考えていただき,その人たちがどう回答したのかを出すことで,受講生がひとりで考えたことを,出てくる回答と比較できるようにした。できそうなところとしてはこんなところだろう。協力いただいた方々には感謝申し上げたい。

オンデマンド教材の作成は準備が長くかかる分,頑張った感が(作った側には)得られやすい。一方,受講者側の満足感は,得られにくい。オンライン学習に関わる議論がもう一段階上に行くとよいのだけれど。