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教育実践研究をまとめる(19)長期休暇中にやるべきことは?

学校の先生が,学校をフィールドにした教育実践研究を進めていると,長期休暇中はその実践研究自体は進展しないことが多い。学校は休み中で授業がない。おまけに大学院の方も,ゼミが開催される頻度も減る。自身のテーマが教員研修であれば本番を迎えるところかもしれないが,多くの人にとっては,実践研究としてはあまり進展がないのではないだろうか。

こうした時期にやることは,「とにかく書く」ということである。報告書を書くのは時間がないと進められない。しかも,このときはある程度何かを実習で進めたという実績もあるのではないだろうか。私の所属する大阪教育大学の連合教職大学院では,半期に1回,夏休みや春休み前に中間報告の場が催されるが,そのような場がもしあったとしたら,内容はある程度持っているはずである。

この時期には積極的なアウトプットをおすすめしたい。中には,インプットに積極的になる方もおられると思うが,それは継続的にこまめに続けるものである。一方,書くのには気構えがいる。一気にすべてを書くことはできない。書くためのスタートを早くしたい。

完全にまとめなくても良い。論文体のものでなくても良い,日記のようなもので良い。何をやったのか,その結果どうだったのか,何を考えたのか。これらは後で思い出しても時が経てばたつほど忘れてしまうものである。完成度は気にせずどんどん書き溜めたい。

こうしたことをやっておけると,後に推敲に時間を割くことができる。1回書いて終わってしまわないためには,先に編集できる素材を作っておきたい。

教育実践研究をまとめる(18)マイ・プロジェクトを進めるために

教職大学院の実践研究も,通常の研究とまでは行かないが,ある程度構成的に書かなければ,他者に伝えることはできない。自分のやったことを時系列に伝えるだけでは,「それってあなたの日記ですよね?」という指摘を受けることになる。

一方,それを背景ー目的ー方法ー結果ー考察ーまとめというフォーマットに落とし込んで伝えようとするならば,見た目は良いのかもしれないけれど,あまりにもキレイで,より客観的なものになり,その良さが失われるようにも思う。こうしたことは何度も書いてきたように思う(書くのがあまりにも久しぶりで忘れているけれども)。
後者は成果として焦点化されたものであるからできれば他の人にも参照可能な知見としてぜひまとめたい。しかし,前者には価値がないのだろうか?

私は研究者教員でもあることから後者を重視してきたが,長らく進めてくると,前者にも当該本人にとって大きな価値があるのではないかと思えるようになった。

例えば,ICTを活用した授業研究を学校内で進めようと自分で企画をするとする。それは時間をかけて先行的な実践を検討したりして計画をしたものであれば,頑張って実施して良い成果を収めたい。

しかしそうはうまく行かない。学校内の授業研究グループで提案をしても,自分の伝え方に原因があり,あまり受け入れられないこともあるかもしれない。そもそも,それを検討するに当たりグループでの打ち合わせをしようとするもみんな忙しくて日程調整が敵わない。このようなことを通して,思ったことがうまく進まない院生が大半である。

でもそこで足を止め,少し振り返って「こういう方法で発信すればよいのだな」とか「管理職よりも先にAさんに相談をすればうまくいくのではないか」など考えたりしてみる。このようなことが今後自身の職務をうまく進めていくときの知見や教師としての力量にも繋がってくるのではないだろうか。

すなわち,自身の教育実践研究をひとつのマイ・プロジェクトと捉え,その試行錯誤を含む取り組みを通して,自身の力量を省察していくことが「学校における実習」,個人的な視点を少し削ぎ落としつつ,他者も参照可能な客観的な研究知見になりそうな主なところをまとめていくのが「実践課題研究(修了の報告書)」という捉え方で良いのではないだろうか。

その際,前者と後者の発表や成果物をどの程度切り分けるか,同じ情報からそれは判断できるのか,あるいはその比重は,などといったところは個人のキャリアなどにも大きく関係するのではないかと考える。

教育実践研究をまとめる(17)計画として長期の評価計画を盛り込む

教育実践研究の計画を立てる際,その目的は重要であり,目的を明確化する際には,評価を考慮することも重要であるということを(4)にまとめた。現在年度初めに入り,新たな院生の方への指導を始めているが,このことを実感する。

自身はこれまで,あまりはじめから評価を意識しすぎないように指導をしてきたが(そもそもの実践の質が問題だし,学会や学会誌論文の発表を志向するわけではないので),その結果,実践の実施が先立ってしまい,途中から評価について議論することが多くあり,その弊害のようなものも感じてきた。

複数年で,いくつかの教育実践研究のサイクルを意識するのであれば,継続的に評価し,それがより向上するのかどうかを検討することが基本的には良いだろう。その評価結果は説得力を持つし,何を評価するべきかを考えることは,長期に渡る教育実践研究の全体計画に1本の筋道をつけることになる。

途中から評価の観点が増えることになっても良いが,何を継続して評価するかを考えることは,教育実践研究の目的を明確化することにつながるので,ひとつの王道だということを忘れてはならない。

もちろん,評価にあたっては,多様な評価を心がける,というのは学校での授業と同じであることも肝に命じたい。この点から,対象者が自己評価をするための項目を先行研究から検討したり,自由記述としてどのようなデータを収集すればよいかを検討したり,インタビューなども考えてみると良いと思う。

「教育実践研究をまとめる」のリスト化

昨年度から,教職大学院の現職教員大学院生が,学校等勤務先での実習(10単位)の成果を最終報告書としてどのようにまとめるかについてこれまでの経験等に基づいて私見を「教育実践研究をまとめる」として,書いてきた。

1年でもっと書きたかったけれど,書けた記事は16個であった。

その都度,実践研究というタグも付けているのだが,この度固定ページとしてリスト化した。ご意見やご感想,あるいは記事になるようなテーマなども教えていただければと思う。

教授昇任

この4月より,大阪教育大学・総合教育系・教授に昇任いたしました。今までご指導くださった方々,一緒に学んだり,働いた方々,すべての方々に感謝申し上げます。

また,学会や教育の現場で一緒に仕事をしたり,研究をしたりなどお付き合いさせていただいてきた方,もちろんその他の周りの方々にも感謝申し上げます。

所属となる系も少し変わりましたが,引き続き天王寺キャンパスにて連合教職大学院で中心に働く予定です。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。このサイトも引き続きぼちぼち更新したいと思います。