「実践研究」カテゴリーアーカイブ

教育実践研究をまとめる(10)先行研究を比較検討する

前回,(通常は研究と言わないものも含む)先行研究について,どのように考え調べるかということについてまとめた。「多様に調べる」ということが重要であるとした。要は,量と質が大切である,ということになる。

しかし,それが通じないケースがある。1冊の書籍を通して自分にはストンとおちた,あるいは紹介された書籍がとても参考となるものだったという事例がそれにあたる。特定少数の資料を参考にするだけでは,基本的にうまくいかない。その資料は,質は高かったかもしれないが,量的な観点が抜けているのである。

そこから派生させて調べ続ける必要がある。複数調べて,その考え方の異同を比較検討することが必要である。結果1冊読んだ書籍の考え方を利用するとしても,なぜそれを用いるのかという理由を説明できることが必要である。それには,他の資料と比較検討して,なぜ当該資料を採用したのかという方法を取ると説明がしやすい。あるいは,複数資料を比較検討し,組み合わせる,という方法もあろう。

この段階で得てして「他に関連資料が見つからない」という言葉も聞く。これに対しては,キーワードをいくつか用意するということが必要である。たとえば,反転授業に関する研究を調べようとする。そのときに,「反転授業」というキーワードを利用しているだけでは広がらない。例えば,このキーワードに関連する新たなるキーワードを考えてみよう。そうすると,予習や宿題,家庭学習などというものを思いつく。

一方,絞れないというケースもある。この場合もキーワードが重要な役割を果たす。例えば,「ICT」だけを調べても無限に出てくるので,関連する資料に多く当たりながら,さらに深めたいキーワードは何なのかを考える必要がある。

なお,研究論文について整理,比較検討する場合は,文献をレビューする方法についてまとめられた書籍が出版されているので,そちらを参考にすることをおすすめする。

教育実践研究をまとめる(9)先行研究(?)を検討する

研究のすべては,先行研究を検討することが求められている。教育実践研究においてもその例外ではない。例えば,(1)言葉を定義するにおいても既存の研究等をヒントにして,定義をすることについて述べた。

一般的な「研究」における先行研究は,基本的に学術論文を検索し,既存の研究について検討するという極めてシンプルな方法を取ることになる。

しかし,教育実践研究においては検索すべきものが多様であり,それぞれから得られるメリットが有る。

  1. 上記同様に学術誌を検索することは求められる。しかし,これでは限定された範囲に留まることが多い。研究テーマが焦点化されすぎており,「自分にマッチしたものがない」とすぐに結論づけてしまう危険性がある。
  2. 論文としては刊行されていなくても,書籍として発行されているケースがある。論文は短く書かざるを得ないため,ひとつのテーマについて体系的にまとめたいと思う研究者・実践者が多いためである。
  3. 教育実践事例集のようなものについて検討することも必要である。たとえば書籍として発行されている例もある。あるいはパナソニック教育財団のようにこれまでの実践研究助成をデータベース化しているものもある。文部科学省等が発行している例もある。
  4. 文部科学省の政策や学習指導要領,政策形成の過程となる議論においても自身が考えているテーマがどのように位置づけられているか確認したほうが良い。
  5. 最近は少なくなってきているが,各学校で発行される研究紀要も参考になる。研究先進校や大学附属校の実践トレンドを掴みたい。
  6. 5に比して最近は,教育センター等がWebで事例集や研究成果物を公開することが増えてきているので,これもおさえたい。
  7. 1-5はテーマに関するもので,これとは別になるが,研究方法に関する書籍についてもいくつか目を通してみると良い。ただし,研究初期の段階では目を通さなくても良い。

教職大学院において,これらのことがまとめて「先行研究」と述べられてしまうことが多い。ところがその内実は,研究者なら1を前提にしている人もいるし,実務家教員の場合内実3や4を前提にしているケースもある。どちらが正しいというわけではなく,質が異なるため,いずれも必要である。あとはテーマによりどのカテゴリにどれだけ蓄積されているかは異なってくる。

こうなってくると,「先行研究」という言い方は,教育実践研究においてはあまり適切ではないのかもしれない。幅広くあたることが求められるため,この作業はかなり大変である。期間が決められている中での研究であるから,どうしても完璧にとはいかない。

できるだけ充実した教育実践研究をすすめるためには,いろんなレベルがあることに注意し,いずれのレベルも収集する必要があるということである。

教育実践研究をまとめる(8)校内・組織内の課題の分析で次に行うことは

前回の続き。

いよいよ既存のデータから整理ができ,それでもさらに課題を明確にしたいときは,実際のところ現状はどうなのか,ということを調べる。

ここでよく受ける質問のひとつに,「アンケートを取りたいのですが・・・」とここでも来る。

オーソドックスに言えば,量的な調査であるアンケートのようなものとそれではわからないような詳細を調査し,分析したほうがよい,ということになる。

しかし教職大学院の実践研究の場合,時間は有限であるということ,そもそも実際のアクションを起こさないとはじまらないこと,アンケートの場合,充実した質問紙を作ろうとしたらそれなりに時間がかかることを考えないといけない。また,仮に学校の先生で自校で課題発見の場合の調査をかけようとしても,そもそも人数が少ないことがほとんどなので,充実した量的調査を行うことは難しいことが予想される。

このため,問題発見の方法としての次のステージは,「インタビュー」をおすすめしたい。もちろん,インタビューにだって,手法上勉強しないといけないが,よくない質問紙より多くの情報を得ることができる。

誰かに見てもらいながら,複数の質問項目を立て,その項目を利用し,複数名に聞いてみる。初期段階では,話してもらったことをもとに,質問項目を多少見直すことも必要である。

各対象者(A,B,C・・・など)を縦列,各質問項目を横列に並べ,回答の趣旨をそれぞれのセルにまとめる。そして,各質問項目別の回答傾向の特徴をまとめる。また,各対象者の回答の特徴をまとめ,その回答に類型があるかなどを見るというのが,分析の初歩であり,この段階ではこの方法で内容を確認するということで問題ないと思う。分析手法はもちろん学んでおいて損はないが,まず誰でもできる手だてをとるというのが鉄則である。

教育実践研究をまとめる(7)校内・組織内の課題の分析でまず行うことは

先の投稿において,外向きと内向きの分析があることを述べた。ここでは,内向き,すなわち校内・組織内の課題を分析することを考える。

ここでよく受ける質問で一番多いのは「どのようなアンケートをとったら良いでしょうか?」である。しかし,アンケートを行うというのはかんたんにできるものではないので,その前にまずはやりやすいことから考えたほうが良い。

ひとつは,すでに組織内においてなんらかのデータが残されていることがよくある。例えば,今までアンケートをとっているのだが,それが残っているだけでデータとして活用できていないという事例が見られる。ならばそれを分析しどういう事がわかるか,そしてこのデータで取れていない情報はあるかを検討する。後者については,今後アンケートを行うとしたら,項目の準備につながる。

そのようなデータが残されていなくても,校内に研究紀要,あるいはそこまでいかなくても何らかの文書が残されている可能性がある。ここでもどういう内容が取り上げられているかとか,かつてはどのような目標が設定されていたのかを,過去にさかのぼって調べることができる。

続いて,校内・組織内のリーダー(管理職などの校長)がどのような課題を感じているかをヒアリングしてみるという手段もある。対象者は少数で一般化できるようなデータではないが,トップやリーダー層が考えていることに基づいて,教育実践研究の課題との接点を明確にするのは必ず必要な作業だと言える。

教育実践研究をまとめる(6)問題状況(課題)を分析する

教育実践研究を進める場合,現場が抱える問題状況を分析することが必要である。

この際,内向きと外向きの視点を持つことが必要である。

内向きは,自身の学校(あるいは学級)などが抱えている身近な課題を明らかにするということになる。それにより,どのような課題を抱えており,それがどういう要因により問題があると考えられるのか,ということを検討し,明らかにするということになる。

加えて,外向きの視点が必要である。課題について,他者や他校,他地域がどのように取り組んでいるのか先行事例にあたる。文部科学省等の政策を通して,一般的にどういうことが課題として認識されているのか,それに対してどう対応が検討されているのかを調べる。論文として出されている研究ではこの点に関してどのような研究がなされているのかについても調べる。

そして重要なのが,ここで終わりとするのではなく,内向きの視点と外向きの視点から得られた情報を比較し,どういったことが自身の学校等では問題となっているのかを明確にした上で,それを解決するために教育実践研究の全体像や研究目的をまとめていくということが必要である。

研究の目的を明確化していくには時間がかかる。もちろんはじめから何かをやろうと思って教育実践研究に取り組むのだろうが,この分析を改めて行うと,テーマの見え方が変わってくる。多くの場合,焦点化することが必要である。