「本」カテゴリーアーカイブ

成城学園初等学校の映像教育

日本教育工学会(JSET)の春季全国大会に参加をした。

会場が成城大学と聞いて,思い出したのは「映像科」である。視聴覚教育では特に有名であるが,ここの小学校は昔より映像に関する教育を行っているというのを,文献等を通して知っていた。

大森哲夫(1991) 人間的映像の教育(阿部出版)

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本務の仕事で欠席をした初日,今はどうなっているのだろうと思い調べてみると,成城学園初等学校のWebで紹介されていた。他には,劇などもあるのだそうだ。

https://www.seijogakuen.ed.jp/shoto/education/curriculum

映像の時間はYouTube動画も公開されていて,児童の作品を見ることができる。

まさか今日まで続いているとは知らず驚いた。また,こうした取り組みは中学校・高等学校,大学の取り組みにもつながっているそうだ。素晴らしい。

そのあと学会に参加して,大会企画で初日にあったキャンパスツアーに参加した方からもその様子をうかがった。自分の目で見てみたかったなあ。

こうした独自の良い取り組みを長く行われていることが素晴らしいし,私学ぽくて羨ましく思った。

心理統計の使い方を学ぶ

柴田康順(2018)心理統計の使い方を学ぶ ー質問紙調査による実践を通じてー. 大正大学出版会,東京 を読んだ。この本は,大学生を対象に書いたもので,特に心理系の卒業論文を執筆する際,質問紙を用意し,得られたデータを分析,それをまとめて考察していく際に気をつけると良い点が示されている。

私は授業などでHADという統計ソフトを利用することがあり,作者の清水先生のサイで紹介されているので手にとってみた。心理学のことを勉強する学生さんで思いがけなく統計と出会うことになり戸惑う人を対象にしていて,その点に非常に気を使った書籍となっている。極力難しい話を避けながら,ポイントを絞ったとても丁寧な説明が行われている。

当初手に入れる前は,統計のことが中心に書かれている書籍,HADのマニュアルに近いものをイメージしていたのだが,どのように研究を進めてまとめるかということを全体的には取り扱っている。著者は指導に悩まれ,その点をできるだけ言語化しようとした結果,このような書籍になっているのだろうと思う。そういう点で,私も指導するという立場の者からすると参考になる点が多い。

私の専門分野もそれにあたるが,心理学系に限らず卒業論文等で統計分析を考えている人には第1冊目として有用な書籍だと思った。

まんがで知るデジタルの学び

前田康裕(2022)まんがで知るデジタルの学び.さくら社,東京 を読んだ。この本は,漫画によるストーリーを通してICTの活用がなぜ必要なのか,その意義となる部分について説明しようとしたものである。

内容としては,資質・能力の育成,学習者中心の教育,情報スキルやモラルといった今日よく文言としては紹介されることについて,学校の一般的な目線に立ちながら,なぜそれが重要なのかがわかる内容となっている。また,さらに興味を持った人はその背景なども学習できるように,各章で著者の解説や書籍の紹介がある。

私の知る限りでは,前田先生のこうした漫画のシリーズは7冊目となると思う。これまでの6冊とも素晴らしい内容で,毎度これで終わりかな・・・と思っていたらどんどん出てくる。そして,毎回前回の内容を上回る質の高いものが出版されている。どこから何を考えて,こうした形を成立させていくかが大変興味深い。

以前からもし聞かれたらどうしよう・・・と思っていたことのひとつに「学生さんにおすすめの本はありますか?」という質問がある(ただ,実際に聞かれたことはない)。現段階では本書をおすすめしたい。

教師のための「教える技術」

向後千春(2014)教師のための「教える技術」(明治図書)という書籍を読んだ。この本は,主として学校の先生を対象として,「教える技術」「授業デザイン力」「クラス運営力」についてまとめた書籍である。

上記したように,その構造がはっきりしている。ゆえにシンプルで非常にわかりやすい,というのが本書の最大の特徴であり,教え方をまず学ぶのにはうってつけだと思う。しかしながらそれでいて,幅広さもある。これは教育工学におけるインストラクショナル・デザインだけではなく,心理学にも精通された著者だからこそまとめられるものである。

インストラクショナル・デザインについては,自分も他の書籍で関わっているので,講義に取り入れるときはその枠組を利用しているが,ティームティーチングで心理学の先生に関わりながら実施する際には特に有用だと思った。

[本]科学的な教育研究をデザインする

科学的な教育研究をデザインするという訳書を読んだ。本書は教育研究における研究方法論について論じたものであり,訳者の紹介によれば,修士課程や博士課程の大学院生を対象にしている書籍のようである。

内容については,科学的研究とは一体どういう性格を持つものなのか,何が守られるべきなのかなどについて示されているうえで,教育研究の特徴が示されている。さらに,教育研究においてどのような研究計画をたてるのが良いのか,枠組みに基づき,実例が挙げられている。本書のキーワードはEBPM(Evidence-Based Policy Making)であり,この視点からの教育研究がどうあるべきかについて示されている。

読み慣れないと難しいところがあるが,よく読むとその主張は理解できるし,研究計画の枠組みが参考になり勉強になる。アメリカで発行されている書籍であるが,読んでみるとアメリカの教育研究のコミュニティの大きさが浮かんで見えてくるので,日本の片隅で研究を進めるものとしては,どうしても比べてしまったり,自分には何ができるのだろうか・・・と少々落ち込んでしまった。