加古川市立加古川中学校公開研究会20221102

この2年間,何度か訪問をした加古川中学校で公開研究会が行われた。前日に雨が降り寒くて心配をしたのだが,当日はとてもよい天気であった。

1学年8クラスの大規模な中学校で,2時間にわたり全員の先生により,51の授業が公開された。私はそのうちの10程度の授業で一部しか参加できなかったが,いずれの先生も真摯に取り組んでいたし,ICT活用の幅が広がったと思う。生徒のICT活用スキルも進歩したように見えた。

私は当日はパネルディスカッションのコーディネータを務めた。思いがけず市長や教育長の前でお話をすることになり,時間の関係で十分に話すことはできなかったが,これまでの取り組みをある程度総括できたのではないかと思う。

パナソニック教育財団の助成を取っただけではなく,途中でJAETの優良校の申請をしたり,企業との連携など外部リソースをうまく活用した学校で,山本校長先生のリーダーシップのもと,研究主任の澤先生が熱心に取り組まれた。先生の数が多いのもあり,大変だっただろうと思う。

下の写真は,当日配布された冊子入れで,生徒会主導によりデザインされたchromebookの10のルールをピクトグラムにしたものだそうだ。こういう取り組みも,興味を引くものであった。

chromebook10のルール
(加古川中学校・作)

教育実践研究をまとめる(13)計画をまとめる

これまで,(4)で目的をまとめること,(11)において結果をまとめることの一部について紹介をした。その目的と結果の間に入るのが通常の研究では,「方法」となる。


一般的な研究では,例えば次のようになる。
目的:〜について明確にする。
方法:調査のためのデザインとしてどう考えたかを述べる。そのうえで,
XXX名に対してアンケート調査を行う。YY名に対してインタビューを行う。あるいはその組み合わせ,など調査分析に関する方法を述べる。
結果:アンケート調査(あるいはインタビューなど)の結果を集計し,図○○のように整理したところ,このようなことがわかった。などと記述。
といったように,「方法」にあたるところは,目的を達成するために,どういう調査デザインで,どのように評価のためのデータを収集したかについて述べることになる。

ここで,教育実践研究においては,どのようにまとめればうまく伝わるのかを考えたのだが,「方法」という言葉よりも,「実践計画」「評価方法」という言葉を使い,節を設けるのが適切なのではないかと考えた。この項目では,以下について記すと良いと思われる。

実践計画
・計画をデザインするための方針や原則
・現場の状況
・方針や状況に従い,実際に計画したこと
 実際に計画したことが,方針や状況とどのような接点を持つのか。

評価方法
・評価のためのデータ収集の方法

私もこれまで「方法」と指導をしており,このことについてうまく伝えることができていなかったことに気がついた。特に学会発表を考える人によくあるのだが,どのような計画をして実践をしたのか書かずに,データ収集の方法がよく指摘をされるためこの点だけに注力をする人がよく見られる。論文の査読などでも同じような経験をした。一般的な研究の枠組みに従ったためにこの様になってしまうのだと思う。教育「実践」研究なのだから,評価方法以前にどのような文脈で行ったのかその実践の計画が重要である。特に,実践の計画に関して詳細な記述をすることを考えたい。

遠隔授業の研修会に参加20220929-30

京都府北部地域で実施されている令和4年度学舎制導入校における遠隔授業推進のための研修会に2日に渡って参加をした。

この地域における宮津天橋高等学校,丹後緑風高等学校はもともと4つの高校があったが,2つの高校そして4つの学舎で編成された。2つの学舎は離れていてもひとつの高校で,例えば校長先生はひとり。特定のいくつかの教科において,遠隔合同授業が行われている。

私が京都府からの研究生を5年にわたって5名をこれまで引き受け,そのうちの2名がこの遠隔授業の運営に中心的に関わっていることもあり,この地域と4年程度のお付き合いを重ねている。

本格実施に移行しつつあることで,2日に渡って各校の学舎ペアの遠隔授業をいくつか拝見した。着実にステップアップしている様子を確認することができた。一方,技術上の課題の問題発見や対応がなかなか難しいなと思った。

訪問してみると,自分の身の回りの地域だけ見ていてはよくわからない地域社会のことや未来のことについて考える機会があった。現場を見ないと,そして話さないとわからないこと,知らないことがいっぱいある。考える際には多少,長崎での経験も役立った。

担当の加藤指導主事,現場の中根先生や安見先生には大変お世話になりありがたかった。

ところで各校では両学舎の部活動も合同なのだそうだが,野球に関しては2校4学舎合同で秋季大会に出場したとのこと。強豪校をやぶり,ベスト8だったのだとか。阪神糸井選手の母校であることもあり,話題になったのだそう。明るい話題である。

https://news.yahoo.co.jp/articles/3d9a781650d5a04337c55c89a975e79f0acd9b06

教育実践研究をまとめる(12)3段階のリフレクションを参考にする

これまで書いてきたことから少し離れるのだが,最近以下の書籍を読んだ。

ここの中で,リフレクションについてバンマネンのリフレクションの類型が紹介されており,著者なりの解釈が示されている。孫引きとなるが,バンマネンはこの3つについて以下のように定義しているという。これをそのまま引用すると,

技術的リフレクションとは,ある目的を達成するために,汎用的な原則を技術的に応用することである。(中略)実践的リフレクションとは,個人的な体験,認識,信念などを分析し,実践的な行動を方向づけることである。実践的リフレクションの背後には教育目標や教育経験が存在している。それらの価値を深く考え,その背後にある社会的な成約やイデオロギーを批判的に省察するのが批判的リフレクションである。

千々布敏弥(2021)先生たちのリフレクション. 教育開発研究所,東京 pp.156-157.

著者はこのあとこの考え方に独自の解釈を加えたり,事例を出したりしているので,読んでみることをおすすめしたい。

私がこれを読んで考えたのは,教育実践研究をまとめるときに,上記の技術的リフレクションにより過ぎていないかということである。これはまとめる本人だけではなく,それを指導する自分も含めてである。また,技術的リフレクションを重視する傾向は,学会誌論文における実践研究カテゴリにも同様の傾向が言えるのではないかと思った(もちろんその一方,技術的なリフレクションの視点から,その知見を共有し,みんなが意識化できる技術も特に教育工学においては必要だと思っている)。実はこのことにずっと違和感を感じていたが自身で表現する言葉が見当たらなかったので,本書を読んで分けて考える重要性に気がついた。

一方でリフレクションが重要だとしながら,技術的なものなのか,実践的なものなのか,批判的なものなのか,そのどれでもないものなのか,よくわからないリフレクションも教職大学院に多く存在するのではないだろうか。

このリフレクションにおいて,みんなでどういう合意を持てばよいのかを少し考えた。まずこうした視点を知っておき,分けて考えることから始めると良いのではないかと思った。教職大学院において実践研究をまとめる際には,いずれも必要なのではないか。ただし,それらは何がどういうリフレクションにより生み出されたものなのかがわかることが必要なのではないかと思う。

教育実践研究をまとめる(11)結果や成果は「やったこと」ではない

学年暦としては1年の半分が終わるこの時期,教職大学院における教育実践研究でも一旦区切りをつけてまとめる機会が多いのではないかと思う。私の所属する大学院においても,発表を通してそれをまとめる機会があった。
ここではだいたい,目的やそのためにどういったことに取り組もうとしたか(いわゆる計画)を語った上で,その成果や課題を説明するというのが一般的だと思う。


その「成果」部分において,「やったこと」を説明することで終わるケースがある。例えば,ある教育実践について,学校内での普及を図るという目的があったとして,その「成果」として「学校で授業研究を行うことができた」というようなものである。
これは本来,その前の計画部分に組み込まれるべきものである。もちろん,計画したことを実際に行動に移すためにはたくさんのハードルがあるに違いない。しかし,やっただけでは,直接「成果」とはいえない。もう少し言えば,計画で具体的に何を行うかについて構想していない場合,成果としてやったことやできたことを説明してしまうことになるのかもしれない。


成果として語られるべきものは「やったこと」「できたこと」「行動したこと」ではなく,「実際にやったことがどのような結果をもたらしたか」という形で説明されるべきである。例えば,研修の評価方法として有名なカークパトリックの4段階評価法(日本eラーニングコンソーシアムのページ)においては,一番レベルの低いものとしてレベル1(反応)からスタートしている。実際に教員研修をやったという事実があり,それが終了した際に,研修参加者からどのような反応があったかということが成果として語られるもののはじめの段階となる。
目的ー方法ー結果ー考察ーまとめと課題というフォーマットで普通の論文のように考えてしまうと,こういうことが起こるのかもしれない。ここでいう「方法」として書かれることは,教育実践研究においては,多様なものとなる。

本日書いたことに基づけば,通常の研究論文の「方法」にあたる部分は,少なくとも「(当初立てた)計画」と「実際に行ったこと」については含まれること,それらは切り分けて書かれるべきであるということになろう。その他この部分でまとめることは,次回以降に整理したい。