教育実践研究を進めようとしている現職教員は、研究倫理は3つの層に留意をして研究を進めるのが良い。
最も基本的なものは、(1)公務員・教師としての倫理である。これは研究に関わりなく、その職業に関わる人が意識しなければいけない倫理である。これは大学等の教育機関で指導を受けるものではなく、教員研修等で指導を受けるものである。研究を進める際にもまず一職業人として意識をしなければいけないものである。
続いて、(2)一般的な研究者としての倫理である。これについては、研究者一般が知っておかなければいけない研究倫理となる。これは体系的にまとめられており、以下のように日本学術振興会のWebページより誰でもテキストを入手することができる。大学に所属している場合は、eラーニング教材に取り組むことが大学院生にも課せられているケースが多いと思う。一般的な研究倫理となるので、これも共通して学ばなければいけない事項である。
科学の健全な発展のために-誠実な科学者の心得-
https://www.jsps.go.jp/j-kousei/rinri.html
この研究教材は、学習していると、教育実践研究を進める現職教員にはあまりイメージできないものもある。例えば、研究室に所属をし、教授をはじめとするラボメンバーと共に共同研究を進めることなどがその一例である。他に実験を通して得られた画像の加工など、おおよそ自身の研究とはあまり関わると思われない理系的な研究も自身のイメージからは遠いものとなる。ただこうした教材から研究の幅広さを知ったり、自分の研究に置き換えて考えてみるとあてはまる部分もあると考えられるので、こうした視点からも学習しておきたい。
最後に、(3)教育実践研究者に求められる固有の倫理というものがある。教育実践研究においては学校における教師や子どもが対象となる。教師は学校に所属をしており、管理職が労務等を管理している。子どもには、保護者がいる。学校を取り巻くこうした人たちは働いている時は身近な存在であるが、研究を通してこれらの方々に関わる際は、あくまで研究者として関わっていく事になる。普段の関係性はもちろん大事であるが、ここでは研究者として留意しながら依頼をしたり関わったりしていくことで様々な人から研究への理解を得ることが必要である。
大学における研究倫理の指導は上記の(2)に特化されているケースが多い。(3)は教育研究に関わる各研究分野で、その対応や敏感さがまちまちである。まずは上記した3層構造を意識して教育実践研究を進めるのが良いと思われる。