認知的方略と知的技能の区別

大学の教育方法に関する講義において,稲垣忠(編著)教育の方法と技術(北大路書房)を利用している。

これを基本テキストとし,何年か進めてみると,学生から受ける質問として,いくつか共通したものがあることに気がつくことがある。今年度もまた,それに遭遇をしたので,メモとして残しておきたい。

詳細な説明は省くが,第4章に学習目標の5分類というものがある。この5分類のうち,以前に自身のたてた目標がどれにあたるかわからない,明確でないということに気がつく場面がある。このことについてはこの場面だけだけではなんとも判断できず,目標を改善しながら考えていくしかない。

さらに詳細に迫ると,5分類のうち自身のたてた目標が認知的方略にあたるのか,知的技能にあたるのかというところで判断に迷うケースが出てくるようである。

この場合,教科学習において,その学んだことがその教科の中で応用がきくという範囲であれば,知的技能となる。一方,学んだことがいずれの教科にも応用可能な学び方のようなものは,認知的方略と判断するのが,ひとつのセオリーである。

そして加えて言えば,教科学習の指導案を考える際,実際のところはほとんど知的技能と捉えられるような目標が多いのはこれまでの経験で明らかになっている。裏を返せば,認知的方略はあまり学校教育でも授業設計者もあまり意識にない。

しかしながら,この度の学習指導要領改訂において「学習の基盤となる資質・能力」を提示している。これについて,教科に共通して必要な力は何かを考え,各教科でどのように目標を到達させるかというようなことを提案しているといえよう。これは,認知的方略を獲得することに力を入れようとしている動きのように見える。