教育実践研究をまとめる(3)実践研究サイクルをどう重ねるか

前回,教職大学院のように長期に渡る教育実践研究を続ける場合,いくつかの小さなサイクルを重ねることで,長期的な取り組みを充実させることについて書いた。
その時も,いくつかの形について書いてみたが,そこから少し考えて,整理した。どれかを選択して採用するという方法もあるが,現実としてはこれらの複合型と言えるであろう。
以下,XX型と示すが,これが全てではないだろうし,他の方法もあると思われる。課題分析・問題発見によりある程度目的が整理されたら,それを解決する方法として,何かを選択することになるだろう。

まずひとつめにバージョンアップ型がある。例えば,ある教育方法を適用した教育実践を実施する。そして,それを振り返り評価し,その改善を検討した上で,さらに実践をする。古くからアクション・リサーチと呼んできたものは,これにあたる。特定の方法や教育実践について深めたい場合は,これを採用することになる。

続いて,スケールアップ型がある。ある特定の範囲で行って効果的であったと思うものについて,対象範囲を広げて実施するというものである。例えば,ある学年で実践してきて成果が得られたものについて,他の学年や学校全体でもやってみる,ある学校で取り組んできたものについて,地域全体に広げてやってみるというようなアプローチがあるだろう。

さらに,普及型が考えられる。例えば,言語活動に関する典型事例をリーフレットやビデオなどの成果物にまとめて発信し,その上で、実際に多くの先生方が取り組めるように進めるため,校内で組織的に進める。要は自分で何らかの形で言語化したものが他の人に利用可能なものとなっているかを実践を通して検討するという試みを行う。あるいは,自分の教育実践からスタートし,ある程度成果が得られたものについて,自身より若い教員でもできるかどうか,自身が支援をしながら実践をしてもらう。このような他社の取り組みを通して,自身の言語化において行き届いていなかった点について修正をする。スケールアップ型とも大きくオーバーラップするだろう。

最後に,対象・内容変更型がある。あるカリキュラムについて,教師にはどのように受け入れられたかを検討し,ある程度効果があると判断されれば,今度は子供にとってどうかを検討する。あるいは,ある地域では受け入れられた教育事例や方法が,別の地域でも転移可能か,など。ある実践について,教師から,教材から,子供から分析してみて角度を変える,というのもあるだろう。これについてはそれぞれで課題を残しているのにも関わらず目先が変わるだけで発展しない可能性もあるので,特に注意をしたい。どちらかというと,修士・博士論文に近いものかもしれない。