教育実践研究の成果を発信する場としては,最終報告書に加え,大学院での発表会や学会での発表がある。発表の際には,まず自身の研究の全体像を伝えることで,聞き手に理解してもらいやすくなる。
発表を聞く人はタイトルから興味を持つが,多くの場合,その内容を初めて聞くか,以前に聞いたことがあっても忘れている可能性が高い。そのため,「聞き手が知らない」「初めて聞く」という前提で情報を提供することが重要である。これは,同じメンバーで行うゼミでの発表とは異なる。ゼミメンバーは,発表を繰り返し聞いているから,説明していない点もなんとなく理解してくれるからである。
研究の全体像を伝えるには,1枚の構想図を提示するのが効果的である。私の経験では,多くの方は私などよりも構造を視覚的に示すことが得意であり,数回繰り返すうちわかりやすいものを作成してくることが多い。
もし図示が苦手な場合は,研究の目的と手順を順序立てて示すだけでも聞き手の理解が深まるだろう。長期的に進める教職大学院の教育実践研究では,目的と手順を整理するだけでも内容がわかりやすくなる。パワーポイントのSmartArt程度の簡単な図で十分である。手順がまだ整理されていない場合は,教職大学院の複数科目にわたる実習内容を科目ごとに整理するのも有効である。
さらに,複数のメンバーや組織単位で進める研究では,関係者の役割を示すネットワーク図を描いてみるのも良い。誰が研究に関わり,どのような役割を果たしているかを明示することで,研究の背景がわかりやすくなる。たとえば,研究主任として校長や教頭,学年主任とどのように連携し,役割を分担しているかを図示すると効果的である。
このように作成した図は,報告書にも活用できる。当初の計画段階で作成した図はあまり具体的にならないことが多いので,むしろ実践の途中から描き始めても遅くはない。