教育実践研究をまとめる(1)言葉を定義する

今までも少し考えて時折メモをしていたのだが,教職大学院等において大学院生が実践研究を進める際に気をつけたいことを残していきたい。思いついたときに書くので,順番などは気にせずに。

特にメインタイトルになりそうだとか,キーワードになりそうなものについて,「言葉を定義する」ことが重要である。なぜかというと,同じ用語を利用していても,他の人と捉え方が異なるときがよくあるからである。それに気がつけばよいが,同じ日本語を使っていると,その違いには気が付かず,いくら議論をしてもうまく行かないことがある。このため,特に研究に頻出する言葉については,その定義が必要である。

例えば,「子どもの書く力を育成する」といったときの「書く力」とは一体何を指すのか,人によって思い描くものが異なるので,こういったものを定義したい。人によっては,論理的に書くようなものを考えるかもしれないし,別の人はあったことやその時思ったことを書くようなものを考えるかもしれない。また,内容面だけではなく,どういう場面が書く場面なのかもイメージが異なるかもしれない。原稿用紙に鉛筆で書くのと,PCを利用してキーボードでタイプするのも含んで「書く」と捉える人もいるかも知れない。

このように定義する際に,最終的には自分で定義づけることになるのだが,自分の頭の中だけで考えるものではない。このときには,他の人が過去にこうしたことをどのように定義づけてきたのかを参考にすると良い。ciniiなどで論文や書籍を検索し,書く力を向上させるための研究において,こうした活動がどのように捉えられているのか。もちろん研究だけではなく,文科省による文書から読み取れるものもあるだろう。国語科の学習指導要領においてどういったことが「書く」活動とされているか。あるいは言語活動なんてものがあったけれど,それにも書かれているのではないか・・・など,言葉にもよるかもしれないが実は目を通さないといけないものがいっぱいある。

このときに,いろいろな資料にあたることが重要である。自分にとってイメージが近いから,ということだけではなく,様々な資料を通してその異同を比較しつつ,自分なりに焦点化したものを定義として掲げたい。ただ,旧来用いられてきた定義と同様にするという方が,手続きとしては無難である。

定義をすることというのは,当たり前だがそのあとのすべての計画や実施の前提となるので,丁寧に行いたい。時として定義が異なるのでは?という指摘を受けることもあるかもしれないが,自分で行った定義を基本的な前提とすれば良いので,きちんと比較,定義づけたものであれば,修正の必要があるか耳を傾け,ときには批判的に振り返りつつも,その前提で計画を進めれば良い。

ところで,話外れるが,多くの人の間でキーワードになりつつも,おそらく前提として各人が持っている定義がバラバラなため,議論がかみ合わないということが一般的にも散見される。最近で言えば,「個別最適な学び」と言っているものが例えばそれにあたると思われる。

やはりこのようなときも,他の人がどのように定義づけられているかがとても参考になる。このキーワードで言えば,奈須先生の以下の本がとても勉強になった。学校の先生にとってもよくわかるとても良い本であった。