「論争」がない

仕事で少し放送教育関係のことについて知りたくて「教育放送75年の軌跡」という冊子を手にとった。その歴史の中には,「西本・山下論争」に触れた説明や論考をもう一度見たくて手にとったが,実際にいくつかあった。

論争の内容はここでは触れないが,最近何かの「論争」というのはあるだろうか。この論争は継続的に学会等で議論されたことが記されているが,少なくとも私は学会のシンポなどで「論争」に触れたことがないなあとふと思った。

研究テーマの細分化,そして対立するような(対立するように見える)意見を交わしにくい雰囲気が背景にはあるのではないかと思った。ひょっとすると,これはなかなかシンポジウム等のテーマが最近決めにくいということとも関係しているかもしれない。

デジタル教科書セミナー(特別支援の視点を交えて)

先週神戸にてデジタル教科書セミナーが実施された。これで3年連続しての登壇となる。ちょうど関連法案に関するニュースがその前日に放送されたこともあり,実にタイムリーなタイミングでの開催となった(偶然なんですが)。

私からは講演でICT活用一般に関する話を行った。その次に行われた2件の事例報告は,特に社会や図工に関して,豊富な情報が提供されていた。ただ単に見せて活用すれば良いのではなく,どのような文脈で利用するかについて言及されており,とてもわかり易いものだった。

その次に,私の同僚の庭山先生が,通常学級における特別支援的な視点からのデジタル教科書活用の可能性についてお話をしてくださった。クロストークと銘打って行われたので,私は司会として,半分素人目線で補足事項をうかがうという役割を担った。そもそも庭山先生の話が分かりやすかったので,講演でも良かったかもしれないが,与えられた時間の中で良い感じに拡げることができたのではないかと思う。私自身も大変勉強になった。お話された視点は,これからデジタル教科書がさらに導入される中にあって,さらに注目されることになるであろう。

年間進めてきた各種研修が終わる

2月に入り,年間単位で進めてきた各種研修が終わりを告げた。いずれも1週間の中に集中して実施されたのは,似たような性格を持つものだからだと思う。

大阪市教育センターでは,大阪教育大学連合教職大学院との連携で教職員支援機構の助成を受け,「学校教育ICT推進リーダー」養成に関わって,プログラムを開発してきた。先日,市のICTフロンティア研修に合わせ,8名に修了証とバッジが渡された。8名の先生方は,今後大阪市内外で頑張っていただきたい。研修直前に会議を実施したが,概ね良かったということが確認をされている。

尼崎市教育センターでは,アクティブ・ラーニングに関して研修を進めてきた。最終回では,これまでの取り組みに対して総括がなされた。2年間実施することで,事例も蓄積されてきた。改善点は見られるが,1年目に比して落ち着いてできた。次年度も継続の方向になっているが,これに甘えず次のステージを検討したほうが良いところに来ていると思う。

JSETSIG「教育の情報化」とNHKがタッグを組むICT研修ファシリテーター養成講座は,3年目が終了した。新学習指導要領につながる幾つかのワークショップが,学校の先生方(修了生)により展開された。私は11月のセッションには不参加だったが,その間も受講生がとても頑張った。

3つのうち「ICT研修ファシリテーター養成講座」は他と一線を画す内容となっており,応用しながら持続可能(というか,身の回りで多少無理して?ある程度できる)なのが,大阪市と尼崎市で実施している取り組みである。これらの集合研修と,日々の職務をつなげていく,ということが共通するポイントとなるであろう。これらの取り組みを行うまでは,各学校とのつながりについて考えればよかったが,大阪へ来たと同時に始まったこうした取り組みは,私の視野を拡げるのに役立っているのではないかと思う。

自身の教師教育研究について振り返る

日本教育工学会SIG「教師教育・実践研究」第6回研究会のパネルディスカッションに依頼され,登壇した。私がいただいたテーマは「リフレクションツールの開発」ということで,時任くん@関西学院大学と進めている,教師が省察をするためのデジタルガイドブック(科研費の助成を受けている)を紹介する,というものであった。デジタルで出来たものを披露するのは,今回はじめてであった。

登壇者のプロフィールを考えると,私は教育工学会員であり,研究者教員でもあるので,教育工学者としてどのように教師教育研究にアプローチしているかを語った上で,ツールの紹介をした。

特に大阪教育大学への異動以降,「実践的な教師教育」を意識することが多い。内容も,教育の情報化に関するものが以前は多かったが,両足をかけつつ自分としては教師教育側にシフトさせているつもりだ。ただ,この「実践的」というところには自分としても危うさを感じていて,ただ「実践すること」に終わらせてしまうのではないかという点を心配している。

しかし今回,教師教育研究について改めて自分の経歴や今回の取り組みを整理してみたところ,その方向性は間違っていないことを再認識した。やはりアピールすべき特徴なのだと思う。研究成果の切り出しをもう少し考えないといけないところに課題が残っているように思うが,少しずつコツがつかめるようになってきた感覚がある。

今回は他のパネルディスカッション登壇者の先生方や講演をされた今津先生のお話をそれぞれ自分なりに解釈しながら聞いていた。今やっていることなどとの接点を確認することができて勉強になった。

なお,今回紹介したデジタルブックについては95%出来てきており,あと少しの加筆をすれば完成の運びとなる。時任くんが色々とアイディアを出しながら,うまく実現してくれたと思う。最終的には,公開をしたいと思う。

転機とプチ転機

先日,パスポートの更新について書いたが過去を振り返っていた上で気がついたことがある。5年程度で一度,大きな山場を迎えているということだ。いわゆる転機と言うものにあたるだろう。

  • 2000年に博士課程入学
  • 2005年に正式な職を得る
  • 2010年に在外研究に出る
  • 2015年に異動する

と言った具合である。各転機の間には,プチ転機と言って良いものがあった。

  • 2003年に研究員としての職を得る
  • 2008年に教職大学院がスタート
  • 2012年に勤務校で学会全国大会,その後2013年にその学会の理事に,プライベートの変化も

ちょっとこじつけもあるけれど,特に転機に関しては5年に1回やってきていることをあまり意識していなかったので,少し驚いた(自分は研修などでこういうワークを入れているにも関わらず)。

このように考えると,この2018年はプチ転機にあたる年になるが・・・。とりあえず,年初から色々とあるし,ウイルスにはあたったが,確かに仕事については考えさせられる1年になりそうである。あと,2020年に何が待ち受けているだろうか。楽しみでもあり,怖くもある。