「先行授業実践」も重視しよう

大学院では,幾度となく「先行研究」という言葉が使われる。何か研究を進めていくためには,過去行われた研究と比較し,何をするべきかを考えるというのがひとつのセオリーとなっている。

このような考え方は,授業実践にも適用されてしかるべきだと私は思う。全国では同じような時期に同じ教科書を用いた授業実践が数多くなされている。その幾つかの取り組みは公開研究会やWebにおいて公開され,参考にすることができる。しかし,今まで何名もの授業実践研究の指導に当たってきたが,こうした「先行授業実践」を重視しない例が多い。「対象が変わればやり方が変わる」「そのままやってもうまくいかない」「(なんとなく)面白くない」などがその理由としてはあげられそうである。

こうした「先行授業実践」をそのまませよ,と言っているわけではない,これらを調べるだけで,その後の深まり方が異なるのだ,といいたい。

先日,あるゼミ生の実習で小学校国語「アップとルーズを伝える」(光村図書)の授業展開について議論をする機会があった。なぜそのような授業過程にしたのか,うまくいかなかった理由は何か,これからどう展開していくべきか,ということを話し合った。そして本日,偶然にも金沢星稜大学の佐藤教授の当該単元の報告を目にした。確かに議論をしたことがそこに書かれていたので,その方向性は間違っていなかったことを確認することはできた。しかし,もとからこの報告があれば,授業づくりについてもっと短時間で,もっと深くできたのではないかということが悔やまれる。

もちろん,教材そのものについて理解を深める事は必要だが,それを活用した授業実践が今までどのようなバリエーションをもって行われているのか,是非検討したい。自戒を込めて。