日本教育工学会論文誌に掲載される

最近学会といえば,その業務の切り盛りに日々頭を悩ませているが,論文が掲載された。
時任隼平・寺嶋浩介(2018)学校改善を担うスクールミドルの成長発達に寄与する教職経験に関する研究『日本教育工学会論文誌』42(1) pp.15-29.(2018年7月10日)https://doi.org/10.15077/jjet.41081
要約は,以下の通り。
本研究の目的は,学校改善を担うスクールミドルの成長発達に寄与する教職経験の具体を明らかにする事である.学校改善に取り組む2つの公立高校を研究事例とし,スクールミドル5名を対象にインタビュー調査を実施した.複線径路等至性アプローチを用いて分析した結果,スクールミドルは校務分掌の一環としてパイオニア径路とフェロー径路のいずれかを経た経験を持つ事が明らかとなった.具体的には,パイオニア径路の教師は分掌内で学校改善案を発案し分掌内外の教師との関係調整等を行い,フェロー径路の教師よりも強くリーダーシップを発揮している可能性が示唆された.また,フェロー径路の教師はパイオニア径路の教師とは異なる役割を自律的に担った経験等を経ていた.径路進行の際には受験指導等を重視する学校文化との衝突が生じ,スクールミドルは同僚グループによる協力体制を形成した上で先輩教師からの支援を受けた経験を経ている事が明らかとなった.
教育工学会にはあまりないテーマ,アプローチの研究だが,興味がある方はぜひ手にとって読んでいただきたい。高校の先生を対象としたのも珍しいと思う。この論文により,科研で着手していた教材の幅が広がった。また,自分にとっても,新しい研究手法について考える切っかけともなりよい機会となった。
査読プロセスにかなり時間がかかり,ようやく掲載の運びとなった。自分が中心に書くのならまだしも,後輩の時任くんががんばって投稿して進めたもので,ぜひ採録になってほしいという思いがあったが,途中からは不安ばかりが募った。時任くんは本当に文章がうまいと思ったのだが,これでも難産だということは,もし自分が博士課程等の院生を指導して,これがドクター論文と大きく絡むのだとしたら・・・と思うとゾッとした。こうした立場で指導されている方の苦労を想像することができた。