「本」カテゴリーアーカイブ

コミュニケーション力

コミュニケーション力 (岩波新書)

コミュニケーション力 (岩波新書)

この日記にもあるとおり,「コミュニケーション力」に関わることが多くなってきたので,久しぶりに彼の本を読んでみた。彼のすごさは「提案が3つほどにわかりやすくまとめられている」,「できそう」この2点だと思う。

本書では,コミュニケーションは「意味」と「感情」の二つの要素から成り立っており,これははずせないということが書かれている。どうしても前者にスキルとして偏りがちになるので,これは重要だと思った。

後半では実際の技法,たとえば偏愛マップ・コミュニケーション,コメント力,質問力など彼が今まで他著で述べてきたことが簡単にまとめられている。ひとつひとつは「できそう」な感じがした。ただこれらの全体構成がどのようになっているのか(~力が多すぎ),1回やってみれば面白そうだが本当に継続的なものとして絶えうるのか,ということはよくわからなかった。また大人のコミュニケーション力を育てることを前提としているが,こうした力はもっと年少時から培っていくものではないだろうか。そうなるとまた別の方法が必要だと思うが・・・。「コミュニケーション力」の育成,思っているよりも難しく,複雑なような気がしてきた。

実践心理データ解析

自分の読書記録のためにもメモをとっておかないといけませんね。今年は精進します。多読することを心がけます。本サイトでは簡単にご紹介。

本書のタイトルを見ればそれこそ「データの処理をどうするか」ということについての本なんですけど,それだけではなくて,ひとつの論文にそって,問題をどのように設定し,目的をどのように記述するとか,結果や考察のまとめ方まで触れています。いわゆる「事例から学ぶ」というものです。もちろん,本題のデータ処理に関しても研究計画の違いによって章立てをしており,「こういうときにはどうすれば・・・」的なものがあればその章を見ればよいということになるので,非常に参考になります。量的に統計調査を取りたいときに実践的なアプローチとして参考になる本です。

社会人大学院へ行こう

社会人大学院へ行こう (生活人新書)

社会人大学院へ行こう (生活人新書)

僕が大学院に入ったのは1998年のこと。当時,関西に社会人を対象としたサテライトキャンパスができ始めていた。関大の総合情報学研究科も社会人入試を重視すると言うふれこみであった。懐かしいなあ。本書では様々な社会人院生経験者へのインタビューが掲載されていて,非常に興味深かった。本当に大変な様子が伝わってくる。勉強しようとしている人は増えているのに,それを支える社会や教育のシステムが整っていないことを実感した。

僕みたいにストレートであがってきた院生からすると,彼らが社会の実践から学んできた情報を得るのは非常に勉強となった。現在,自分の出身研究室には数名の方がおられるが,その数は年々減ってきているような気がする。他に選択肢が増えたこともあるが,今のシステムが阻害要因になっているようにも思う。もっと増えるといいですが。ひょっとしたら,修了生でもこのサイトを見ている方もいるかもしれないですね。お元気ですか?

ところで,長年社会人を含めて大学院生を見てきて,ひとつこれだけは言いたいことがある。それは「修士論文を書いて修了すること」。当たり前かつシンプルだが,この言葉が意味するところは深い。社会人にとってこれが実に難しい。でもそれを乗り越えないことには大学院で勉強することは意味がないと思う。あくまで僕の意見ですが。

蛇足だが,僕は一期生なので先輩はいない。社会人の人でもみんな同級生か後輩となる。村上さんの先輩が僕の同級生とか,親と同じくらいの人が同級生とか,どこかの大学の助教授先生後輩とか・・・。不思議なものです。

授業の知

学校や教育・授業などを運営するにあたっての「知」を様々な角度から分析したもの。一線の研究者が分担執筆をしているので,これはお買い得です。対象は大学での授業を想定していますが,初等・中等教育での実践知が活かされていると思います。この点は僕が常日頃考えている研究のあり方とも重なるので参考になりました。カリキュラム(安彦論文),教師教育や授業研究(生田論文,浅田論文,澤本論文など)がわかりやすく書かれています。

認知的道具のデザイン

「学習などの活動環境を状況論からデザインする」という帯にあるとおり,それらに関する理論と実践がまとめられている。特に7章のアルゴアリーナというソフトの設計と評価に関わる加藤・鈴木論文が参考となった。ここでは学習環境をデザインする際の構成要素として3つのレベルに整理している。

ヒト(組織)のデザイン:組織,制度など

コト(活動)のデザイン:活動内容,目的など

モノ(道具)のデザイン:器具・道具,教育メディアなど

以上が原則として上から,往復しながらデザインされていくと言う。内容がデザイナによって全て可変というわけでもなく制約も出てくるだろうから,往復作用の過程において,そういうときにどのような意思決定をするかが重要であると思った。非常にシンプルでよい枠組みだと思う。