「本」カテゴリーアーカイブ

パワフル・ラーニング 社会に開かれた学びと理解をつくる

本書を編訳者である深見先生(島根大学)から頂いた。本書は編著者であるダーリン-ハモンドを中心とした初等・中等教育における能動的な学習の理論的視野と数多くの実践を各種の教科の立場から紹介してくれている。邦題タイトルを見ても分かるように,日本の次期学習指導要領において期待される教育実践との接点を持つと考えられ,このタイミングで出版をされたのだろうと思われる。
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実際の内容を見てみると,21世紀型スキルの獲得につながる探究的な学習が随所に渡ってその重要性や背景理論が紹介されている。章構成などを見てみると,同様に訳書として出されている以下の書籍などを思い出しながら読んだ。
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今回「パワフル・ラーニング」を読んでいると,革新的な書籍というよりはむしろ,学習科学研究の流れの中で継続発展的に進められているプロジェクト型の学習がさらに蓄積されているというように読み取れる。我が国でも,こうした学習に興味がある人が読めば,大変魅力的な数多くの学習事例が掲載されており,とても勉強になる。「理解」ということがひとつのキーワードとなっているが,最終章を見てみると,今我が国で目指されている方向性とかなり一致する(というか国の目指している方向性としてこういうものが下敷きとなっている)ということがわかる。私たちは「理解する」ということをあまりに小手先のことに置き換えているのではないかと思う。
頂いたから持ち上げるというわけではないが,深見さんの魂が込められているように感じるし,真面目な性格がとてもよく表れている。それは編訳者による「はじめに」と「おわりに」に表れている。「はじめに」においては,日本の学校教育政策の現状において本書はどういった点に意義があるのか,「おわりに」においては本書の成果を踏まえて学校で取り組めることを,短期的に,かつ中・長期的にすべきことは何なのかということについて独自の考え方をまとめておられる。私として,比較的学校の先生方と接する立場から想像してみると,現場目線ではそれでも短期的なものもなかなか難しいという声が聞こえてくるのだろうな,というのは思った。とはいえ,高等学校の探究に関する科目はこれを意図しているし,総合的な学習の取り組みをさらに充実をさせるという点で,参考となる(しなければならない)点がとても多い。
一方,こうしたカリキュラム開発や実施を学校のみに任せるというよりかは,外部機関(NPOや専門家集団)によって,カリキュラムが開発されたり,土曜日や長期休日機間を活用した正課外の学習活動がもっとあっても良いのではないかと思った。落とし所は,学校と学外機関によるカリキュラム開発の活性化,といったところだろうか。

「資質・能力」と学びのメカニズム

次期学習指導要領に向けて,最近は例えば解説が公開されるなどしているが,それに関するこの書籍を手にとって読んだ。
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本書は,次期学習指導要領の背景となる考え方が示されている。どういう経緯でまとまっていったか,キーワードとしては,資質・能力,見方・考え方,主体的で対話的で深い学びと言ったところがあげられるであろう。各種の誤解などについても説明しながら,その本質はどういうところにあるか,具体的にどのような教育場面が考えられるかを丁寧に描いている。
学習指導要領に目を通す前に,まずこれを読んだほうがいいかもしれないと思うほど,具体的でよくわかるものであった。その背景(なぜ今回のようになっているか)についてがよくわかるからである。アクティブラーニングについてももちろん触れられている。最近特におすすめの書籍を聞かれるのだが,私は今後はこれを推薦したい。
特に興味深かったのは,p184からはじまる「明示的な指導」というところである。最近中学校教員を希望する大学院生を持つことが多く,各種教科に立ち入った話をすることが多い。各教科の見方・考え方を彼らが専門でもない私以上に理解できていないなあとよく思うのだけれど,私の話がしたいのがまさにここに書かれていた。教科の何を指導するのか,特に単元を越えて身につけさせたいのは何なのか,ということ。結局はブルーナーの話になるのかなと思った。
こんなことを考えていると,現場の先生が今後苦労していくことになるのだけれど,大学院生に最低限身につけさせないといけないのは,何なんだろう,という疑問を改めて持った。
本書の著者は,以下の書籍において特に教科の本質にアプローチしようとされている。私はこちらの方を先に読んだのだけれど,興味がある人はあわせて読むのが良いだろうと思う。
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メディア・リテラシーの発展書として(中橋雄(編著)「メディア・リテラシー教育」)

もうだいぶ前のことなのだが,中橋くん@武蔵大学から,またまた書籍を頂いた。標記のタイトルで,副題は「ソーシャルメディア時代の実践と学び」とある。中橋くんがずっと取り組んできているメディア・リテラシーについて,今日のメディアの発展を踏まえた視点がまとめられている。
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実に手堅い編成だと思った。それは共著者のラインナップに現れるのだが,実際にこれだけのメンバーに書いてもらおうと思うと,普通はみんな思い思いに書くので,内容がまとまらないものがほとんどである。しかし,中橋くんもそれを熟知した上で編成しているので,それぞれの章が生かされながら,まとまっている。こういうのが編著者の腕なのだろうと思う。
一方,本書はメディア・リテラシーの構成要素をはじめとして,理論面について保障しつつも,実践が多角的であり,豊富であるというのがその大きな特徴であると思う。ひとつの実践を取り上げるだけではなく,カリキュラムや教材,教師教育的な視点も取り上げられている。かなり網羅されており,抜け目がない。一体,この編著者のおじさんは歳いくつ?と問いたくなる。
私がもし大学の授業等で活用するのであれば,前著「メディア・リテラシー論」を講義科目の教科書として使い,それに興味を持った学生には本書を読ませるようなアプローチを取るかな,なんて思いながら読ませてもらった。
中橋くんに送れるようになる本を,私も書きたいな。
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プロフェッショナル・ラーニング・コミュニティによる学校再生

以下の様な本を見つけたので,読んだ。分担者となっている科研費の研究で,PLCに関連する研究に取り組んでいるためである。

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本書は今日,教師教育において重要な概念のひとつとなっているプロフェッショナル・ラーニング・コミュニティ(専門的な学習共同体)について,論じられている。それを支える背景理論,PLCから見た日本の授業研究の特徴,さらに学力が高いという報告が出ている秋田県や福井県についてPLCの視点から著者なりに分析・考察をしている。

150ページ弱とそんなに分量はないのだが,内容は盛りだくさん。共通して,PLCの視点から見た時に,日本の学校で行われる授業研究には効果や意義が認められるということについてメッセージを発している。多角的に論じられており,大変勉強となった。

本書の主軸となるのはPLCという新しい視点であるが,本書の前半には,教師の成長や専門職としての教師の立ち位置のことについても触れられている。基本的なことから勉強できる。その中で,教員の集合研修の成果を分析した先行研究が取り上げられていた。こうしたことが研究なされているのはすごいなと思った。ちなみに生徒の学力向上としては,効果は見られないということ。それよりも学校を基盤としたものが効果があるという記述が多く見られるのだそうだ。研究と実践,それぞれの方面から,自分がどのように関わりながら取り組めばよいのかについて,考えさせられた。

やっぱり,そうだよね・・・。本「できる研究者の論文生産術」

わらにもすがりたい思い?(苦笑)で「できる研究者の論文生産術」という本を読んだ。

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本書は,書くことに追われている研究者が,どうすれば論文を書けるかについて論じられている。著者は心理学が専門だとのこと。

主張は明確。色々と言い訳があるけど,そのための時間をきちんと取り,習慣化していくということである。(はい,そうですよね。)こうしたことについて心理学的立場から解説しながら,実際にどうするのかが述べられている。

本書は,それにとどまらず,論文の書き方の作法(著者はアメリカの人なので,英語論文のことになるが),投稿をどうとらえるか,書籍の執筆なども書かれており,その考え方が述べられている。タイトル以上のことが色々と学べる。基本的に自分の考えと似ている点が多く,やはりそうだよねと思った。

印象的だったのは,リジェクトについてどうとらえるか,という部分があり,「リジェクトされてもともとだと思った方が,良い原稿が書けるかもしれない」(p121)とあった。

こんなことを書いていると,「あれはどうなったの」「これはどうなんや」「書いている場合か」と聞かれるかと思いますが,頑張ります。ハイ。