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連続する実践研究は「のりしろ」が重要

教職大学院で,教育実践研究の報告書を院生がまとめることについて指導をしてきた。この指導についてあまり言語化できていないところがあり,今後気にとまったことを都度書いていきたいと思う。

報告書をまとめる際に,特に重視しているのは実践と実践の間の「のりしろ」である。院生は2年に渡り,10単位の実習を進める。多くの場合,ひとつのセメスターの取り組みが1章分に相当するので,目的や先行研究,最後のまとめを除けば3,4章分できることになる。この各章のつながりを「のりしろ」と自分の中ではいっている。章と章をどのようにつなぐのか,ということをイメージしている。

ある章の実践研究には,成果と課題がある。ここで取り上げられた課題をクリアすることが,次の章の目的となる。この課題と目的の一致が重要である。

もちろん,前の章に掲げられる課題には,次の章の目的に直接つながるものと,そうではないものがあるだろう。直接つながるものは実践研究の主要なテーマとなるものや全体のデザインに大きく作用するもの,そうではないものは少し改善されれば明らかに効果につながるものや振り返ってみれば当然だが,実践においてできていなかったことがあげられるだろう。

教職大学院の実践課題研究報告書の構成に見る深い溝

教職大学院においては修士論文がない代わりに,実践課題研究報告書というのを(うちの大学院では)提出することになっている。

一応これまで指導をしてきたつもりなのであるが,各人によりその構成がまちまちなところがあり,指導(というかコメントをファイルに入れる)のが難しい。対象が現職教員院生となり,それがさらに顕著になった。

実践課題研究報告書をまとめる際は,2つの視点に留意し,それがうまく混ざることが良いのではないかと考えた。

ひとつは,研究論文としての構造である。すなわち,背景ー目的ーそれを実現させるための方法ーデータから出てきた(導き出される)結果ー結果を踏まえての議論・考察である。この構造を持ってまとめると,ある程度明確に示すことができるという点でメリットがあるが,載せたほうがよい情報を削ってしまったり,構成を重視するがゆえに削らざるを得ない可能性が出てくる。

もう一つは,実践研究としてのポートフォリオ性である。できるだけ状況や行ったこと,結果や意図せざるものまでを分厚く順序立てて描くといったイメージだろうか。これは,実践として鮮やかに描けるというメリットが有る一方で,どうしてもその場や状況に依存する。また,「なんとかがんばってまとめた」という本人の自己満足に終わる可能性もある。

私としては,前者のようなアプローチを基本的に心がけることが必要だと思っていたが,綺麗にまとめすぎようとして,下手をすると実践から目を背けてしまい,振り返りが浅くなる可能性がある。一方,実践でやったことだけをつらつらまとめるだけでは,別に大学院にいなくてもできるかもしれないことで,日誌としてまとめることと同じものになってしまいかねない。

以上から,両極にある視点としてこのふたつはとても大切であり,執筆をする人は心がけておかないといけないと思った。いわゆる「理論と実践の往還」という言葉にまとめてしまうことになり,そう言ってしまえばかんたんなのだが,長年教職大学院に関わってきたものとしては,あえて両者の視点には深い溝があると言いたい。この溝を乗り越えるにはどうすればよいだろうか?