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教育実践研究をまとめる(5)研究目的としての要因把握

先日,教育実践研究をまとめる(4)研究目的の立て方(効果検証の場合)について投稿をした際,(効果検証の場合)と書いた。となると,その他にもあるということになる。

教職大学院での教育実践研究のように,限られた時間の中で行う実践研究について,私は基本的には何らかの方法や教材内容が対象者に対して効果をもたらすものかを検証し,実践したものをまとめれば良いと考えている。

ただしその前段階となる目的として,対象となる現場においてどのような問題があるか,課題発見を小さな実践研究サイクルでの目的にすることは十分考えられるし,それはあったほうが良いのではないかと思う。これを一応,「要因把握」と名付けることにした(厳密に言うと,違うと思うけれど)。

この際の目的の書き方は例えば,「既存のICT活用研修において,どのような課題があるのかを明確にする」や,「子どもに学力としての成果をもたらしている○○科での授業実践には,どのような要素が共通して見られるのかを明確にする」などといった記述が考えられよう。

しかしこの要因把握という目的だけでは,教職大学院での教育実践研究は成立しないと私は考える。そこでわかったことに基づいて,実践をし,本当にその要因が適用できるかを考えないといけないと考えるからである。アクションリサーチが原則である。

教育実践研究をまとめる(4)研究目的の立て方(効果検証の場合)

どんな研究においても研究目的が明確になっていることが重要である。この研究目的がその内容の成否の鍵を握る。
なにか目的や目標(これらをここでは使い分けるものではないが)について,明確に示すには,インストラクショナル・デザインでも取り上げられるメーガーの3つの質問が参考になる。それは,

  • Where am I going? (どこへ行くのか?)
  • How do I know when I get there?(たどりついたかどうかをどうやって知るのか?)
  • How do I get there?(どうやってそこへ行くのか?)

として記述されるものである。(なお余談にはなるが,このメーガーの3つの質問について,林先生@徳島文理大の記事が大変勉強になるのでおすすめしたい。)

教育実践研究において,仮に何かの効果を検証するという場合には,これらを参考にし,
1.誰のどんな効果をねらえばよいのか(向上させればよいのか),
2.それをどのように把握しようとし,それがどの程度の水準に到達することを目指すのか,
3.どのような方法でその効果をねらうのか,というような形に整理することができるだろう。

1については,「生徒の書く力を向上させる」というような形で記述される。この点で誰の,どのような能力かなどが記述されることが必要である。ここでは,もちろん「書く力」が一体どういう力なのかもその前提で明確にしておくことが必要である。
2について,例えば学力に関するテストで把握するなど評価方法を記述することが必要である。また,それがどの程度に達すればよいかについても述べられないといけない。例えば,事前調査と事後調査を比較し,事後調査が統計的に有意な形で向上するなどといったようなものになるだろうか。なお,これに関しては目的には文章としては組み込まないケースが多いが,目的以降に「研究の方法」として記述されることになる。
3については,効果をもたらすことができる(と考えている)方法を記述することになる。例えば,シンキングツールを活用して・・・とか,ICTの活用で,といったような手段がそれにあたる。

この際,3つが一致しているかどうかも重要である。例えば,1で「生徒の書く力」としたときに,3で教師の授業研究とはめてしまうことが結構ある。授業研究をしたことが生徒の書く力に結びつくまでにはさらなるステップが必要となるので,この場合,課題となる目的について分割をし,授業研究を通して教師の書く力に関する指導力の向上→先生の指導による生徒の書く力の向上,と目的を2段組にして示すことになる(いずれも大きな課題だけれど)。この1と3のセットにブレがなければ,2を検討することになるだろう。

認知的方略と知的技能の区別

大学の教育方法に関する講義において,稲垣忠(編著)教育の方法と技術(北大路書房)を利用している。

これを基本テキストとし,何年か進めてみると,学生から受ける質問として,いくつか共通したものがあることに気がつくことがある。今年度もまた,それに遭遇をしたので,メモとして残しておきたい。

詳細な説明は省くが,第4章に学習目標の5分類というものがある。この5分類のうち,以前に自身のたてた目標がどれにあたるかわからない,明確でないということに気がつく場面がある。このことについてはこの場面だけだけではなんとも判断できず,目標を改善しながら考えていくしかない。

さらに詳細に迫ると,5分類のうち自身のたてた目標が認知的方略にあたるのか,知的技能にあたるのかというところで判断に迷うケースが出てくるようである。

この場合,教科学習において,その学んだことがその教科の中で応用がきくという範囲であれば,知的技能となる。一方,学んだことがいずれの教科にも応用可能な学び方のようなものは,認知的方略と判断するのが,ひとつのセオリーである。

そして加えて言えば,教科学習の指導案を考える際,実際のところはほとんど知的技能と捉えられるような目標が多いのはこれまでの経験で明らかになっている。裏を返せば,認知的方略はあまり学校教育でも授業設計者もあまり意識にない。

しかしながら,この度の学習指導要領改訂において「学習の基盤となる資質・能力」を提示している。これについて,教科に共通して必要な力は何かを考え,各教科でどのように目標を到達させるかというようなことを提案しているといえよう。これは,認知的方略を獲得することに力を入れようとしている動きのように見える。

教育実践研究をまとめる(3)実践研究サイクルをどう重ねるか

前回,教職大学院のように長期に渡る教育実践研究を続ける場合,いくつかの小さなサイクルを重ねることで,長期的な取り組みを充実させることについて書いた。
その時も,いくつかの形について書いてみたが,そこから少し考えて,整理した。どれかを選択して採用するという方法もあるが,現実としてはこれらの複合型と言えるであろう。
以下,XX型と示すが,これが全てではないだろうし,他の方法もあると思われる。課題分析・問題発見によりある程度目的が整理されたら,それを解決する方法として,何かを選択することになるだろう。

まずひとつめにバージョンアップ型がある。例えば,ある教育方法を適用した教育実践を実施する。そして,それを振り返り評価し,その改善を検討した上で,さらに実践をする。古くからアクション・リサーチと呼んできたものは,これにあたる。特定の方法や教育実践について深めたい場合は,これを採用することになる。

続いて,スケールアップ型がある。ある特定の範囲で行って効果的であったと思うものについて,対象範囲を広げて実施するというものである。例えば,ある学年で実践してきて成果が得られたものについて,他の学年や学校全体でもやってみる,ある学校で取り組んできたものについて,地域全体に広げてやってみるというようなアプローチがあるだろう。

さらに,普及型が考えられる。例えば,言語活動に関する典型事例をリーフレットやビデオなどの成果物にまとめて発信し,その上で、実際に多くの先生方が取り組めるように進めるため,校内で組織的に進める。要は自分で何らかの形で言語化したものが他の人に利用可能なものとなっているかを実践を通して検討するという試みを行う。あるいは,自分の教育実践からスタートし,ある程度成果が得られたものについて,自身より若い教員でもできるかどうか,自身が支援をしながら実践をしてもらう。このような他社の取り組みを通して,自身の言語化において行き届いていなかった点について修正をする。スケールアップ型とも大きくオーバーラップするだろう。

最後に,対象・内容変更型がある。あるカリキュラムについて,教師にはどのように受け入れられたかを検討し,ある程度効果があると判断されれば,今度は子供にとってどうかを検討する。あるいは,ある地域では受け入れられた教育事例や方法が,別の地域でも転移可能か,など。ある実践について,教師から,教材から,子供から分析してみて角度を変える,というのもあるだろう。これについてはそれぞれで課題を残しているのにも関わらず目先が変わるだけで発展しない可能性もあるので,特に注意をしたい。どちらかというと,修士・博士論文に近いものかもしれない。

教育実践研究をまとめる(2)数度のサイクルで計画する

教職大学院等で進める教育実践研究と,その他普通に行う教育実践研究の違いはなにか?前者には,締切が明確に設定されているという点である。

例えば,大阪教育大学連合教職大学院であれば,4つの実習科目が設定されている。2年間にわたる見通しとして,何をテーマとし,何を実現させることを目標とするのかについて明確にすることが必要である。もちろん,途中で修正が入るだろうが,あとでそれがどのように変わってきたかを振り返るためにも,2年間に渡る見通しを立てる。これが大きなひとつのサイクルとなる。

その上で,各実習ごとのサイクルを設ける。大教大の場合は,2年間の各セメスターでひとつひとつの実習があるから,各実習で何を目標として,何を実施するのかを明確にする。こちらは小さいサイクルとなる。いわゆる大きなゴールから考え,それを逆算する逆向き設計と言われる考え方となる。

大きなサイクルでもPDCAのような流れが進行するであろうし,小さなサイクルひとつをとっても,PDCAが進行する入れ子状態となる。

なお,一番初めの小さなサイクルでは,P(計画)が重視されるだろう。この計画のために,問題状況や課題の分析が必要である。それに基づき,2番目以降でのサイクルの計画が設定される。あとに行くに従い,対象範囲が広くなる,より普及推進の要素が入るなどのスケールアップが必要となる。

これに対し,大学院のようなカリキュラムに従って進まない場合は,はじめの教育実践からデータを得て修正をしていく,いわゆるアクション・リサーチのようなものになるだろう。これはひとつのサイクルが終われば,そのデータに基づき再設計を行うなどして,サイクルを重ねていく。締切があるわけではないので,終わりがない。終わりを自分でコントロールするということを考えると,より大変だろう。

もちろん,上記した教職大学院の教育実践研究もアクション・リサーチの性格を持つものであるが,通常の教育実践研究とは締切があるかかないかの違いで,ややその捉え方が異なってくるように思われる。