[本]メディア・リテラシーの教育論

同窓生の中橋雄さん(武蔵大学)から「メディア・リテラシーの教育論」という書籍を送ってもらった。メディア・リテラシーに関する書籍を2017年,2014年にも出されている。要は3年に1回ぐらいのペースで出版されており,そもそもこうしたことを定期的に実現しようとしている点がすごいなとまず思った。

これまでの書籍と比較すると,よりメディア・リテラシー教育「研究」にこだわっているように見える。著者メンバーは,日本教育工学会のメディア・リテラシーSIGに中心的に関わっている方々である。これらの方々が,理論的研究(第1部)や教育実践研究(第2部),多様な隣接領域(第3部)の側面からそれぞれの立場でメディア・リテラシー教育について論じておられる。

第1部と第2部においては,それぞれに著者が異なるのだが,先行研究をきちんとレビューした上で,その動向をまとめている。よって,これからこのテーマについて学びたい人,あるいはその近く(例えば情報教育など)のことについて学んでいる人は,必ず参照したい書籍となっている。本書を入り口にすれば,メディア・リテラシー教育について,より深く考えられるきっかけをつかめると思う。

個人的には,第3章において諸外国の取り組みに関する研究としてまとめられているところが勉強になった。このテーマは,本来は海外で多く展開されていると思うのだが,国内での発表などを聞いていると,独自色がありそうだと思う一方で,世界的な取り組みの中でどう位置づくのかについてやや疑問に思っていたからだ。こうしたことが研究や実践のレベルに加えて,各国でどのように位置づけられているのかついてさらに知りたいなと思った。

というのも,この2年所属する連合教職大学院において,「メディア・情報リテラシー教育の実践的展開」という講義を持っていて,情報教育とメディア・リテラシー教育の間をさまよいながら受け持っている中で思っていることなのである(実は本書のある方にもゲスト講師を担当いただいたことを思い出した)。こうした立場から,本書によって考えを深めることができた。