「研究」カテゴリーアーカイブ

そろそろ研究も

めずらしく研究の話。みんな新年度から1ヶ月たってそろそろ一段落したのか,研究打ち合わせやプロジェクトなどがこの1週間に立て続けに行われている。そこで感じたことはふたつ。

ひとつめはこのごろ,研究テーマが焦点化されてきたように思う。教育におけるICT活用研究と教師教育研究の交差点が自分の研究対象となるのだろうと思う。それぞれに関心を持って行っているつもりだが,ICT活用に関する教師教育だとか,教師教育における手段としてのICT活用だとかがその交差点となる。前はもっと手広くやってきた(その分,色んな査読が回ってきていて苦しめられているのだが)と思うが,使える時間も限られてきているし,深めて勉強したい部分が出てきているからだと思う。いや,改めて整理できただけなのかもしれない。両者のフィールドの根底に流れているのは,学習者自身が自発的に学び続ける姿勢なのだろう。

ふたつめは,自分よりも若い研究者と仕事をすることが増えてきているし,そういう環境を自分も求めているということ。特に昨今,自分より若い人は,私なんかよりもはるかに厳しい環境にある。その中で頑張っている方たちは,本当に優秀だし,業績もすごい。これは自分の研究室に院生がいてそれを育てるとかというのとは異なる。このような人たちから学ぶことができるのは本当に勉強になる。

このような環境に身をおきながら,自身の成長を引き続き図りたい。そして研究成果を出しつつ,自分の仕事や他の活動が充実していく,というのが理想である(これが難しいのである)。

「教員養成・研修におけるメディア活用」をテーマとした論文化のワークショップ(日本教育メディア学会)20150207

およそ20年ぶりに奈良教育大学を訪問した。日本教育メディア学会のワークショップのためである。企画委員会によるワークショップは,年に2回開かれており,うち1回は編集委員会との合同で開催されている。7月末に「教員養成・現職研修におけるメディア活用」という特集論文の締め切りがあるのだが,その前段でテーマについて共通理解したり,これから進める研究について議論をしたりする場として設けられた。編集委員会の担当が奈良教育大学の小柳先生で,企画委員会の担当が私である。

まず,テーマに関する研究の理解ということで,後藤先生,前田先生,加藤先生からお話を頂いた。後藤先生のビデオでのお話はかなりクリアで,教員養成学が教育の情報化から見て抱える問題(特にカリキュラム)について紹介していただいた。また,今回のテーマの方向性として,コンテンツとして教員養成や研修で,メディア活用について学んでいくということと,養成や研修の手段としてメディアを活用するという研究があるということを整理してくださった。前田先生からは,省察概念の重要性,そこでのメディア活用の可能性としてデジタルストーリーテリングの取り組みについて紹介してくださった。先行研究の検討の範囲や教育実践研究のまとめ方などについて話が及んだ。加藤先生からは日本語教育の教師コミュニティをネットワーク上でどのように運営をしていくかについての研究が紹介された。コミュニティのサイズだとか,そこで課せられる活動内容が重要であるということを学んだ。

後半は,今野先生,小柳先生,寺嶋グループに分散し,参観者に持ってきてもらった研究について,具体的な切り口や分析の方法などを検討した。ひとつの実践においてどのようにテーマを絞込み論文化をするか,多様なデータ収集の重要性などについて再認識させられた。

最後に,編集委員の村上先生から教育メディア研究への投稿にあたり,注意すべき点を述べてくださった。実践研究において,教育実践自体の目的と実践研究としての目的の違いに留意することの重要性を説明していただいた。これについてはなるほどなと思う一方,もう少し考えてみたい点でもある。このへんの考え方の違いが,査読論文としても難しくなっているのかなという気がした。

いろいろ議論もでき,充実した会になった。登壇者の先生方や小柳先生に感謝。

放送教育の研究会に出席

水曜日夜,今月から同僚となった木原先生が中心となり取り組まれている放送教育の研究会(なにわ放研)に出席した。142回目だそうである。放送教育について今取り組んでいることといえば,年に1度のNHK学校放送番組活用講座,そして前任校において授業に少し取り入れているぐらいで,深く考える機会がない。ブログでは拝見していたので,どのような会かは大変興味があり,参加をさせていただいた。

研究会は,学校放送番組を活用した授業の実践報告がふたつあった。番組をみんなで視聴をしながら,その内容や授業実践について報告され,それに基づき話しあうというものだった。私もいくつかコメントをさせていただいたが,どの番組でも通じるような表層的なことを語っていたのではないかと思う。これに対し,普段から議論をされている皆さんは,その番組シリーズの特性を踏まえ,実際のメッセージ,それが提供されるシチュエーションなどに話が及んでいた。自分がしっかりと番組を見ていないことを痛感させられ,大変勉強となった。

さて,着任後初の出張として福岡にやってきた(まさかはじめてが九州行きになろうとは・・・)。明日,冒頭に触れたNHK学校放送番組の活用講座のためである。先日の研究会のあとに番組を見たりして色々と考えたが,すぐには成長できないもので・・・。講師役ではあるが,何かひとつでも自分で勉強になったことを持ち帰りたいと思う。

特別支援学校におけるICT活用を見学する

先週の金曜日,同僚の倉田先生,瀬戸崎先生とともに,諫早特別支援学校を訪問した。特に肢体不自由の児童・生徒を受け入れている学校である。県立学校においても,ICT活用に取り組んでいる学校は数校あるそうで,同校はその1校となる。昨年まで教職大学院のスタッフとして活動をされていた笹山先生が県教委に配属になったこともあり,以前からお誘いを受けていたが,日が決まらず結局この日となった。すいません。当日は笹山先生にはお会いできず残念。

当日は,小学部から高等部に渡るいくつかの授業を参観させていただき,同校のICT活用についての昨年度からの研究の経緯をうかがった。附属学校以外で特別支援学校に訪問すること自体がはじめてであり,その教育課程の複雑さに戸惑ったが,実際にICT活用がなされている場面を参観することで,具体的なイメージがわき,大変意義にある訪問となった。また,子どもにつくスタッフが充実している様子も拝見することができた。

特別支援学校には,旧来からAT(Assistive Technology)の考え方があり,タブレット型端末の導入により,それがさらに積極的に進められていること,その基盤整備には子ども一人ひとりのニーズに合わせて対応しなければいけないということで,苦労されていることなどを知ることができた。他校や保護者との連携を意図した研修なども進めておられるという。特別支援学校一般の取り組みが全体としてどのようなものとなっているのかわからないのでなんとも言えないが,少なくとも本校は,小中高と比べてみると,かなり積極的に進めておられるということがよくわかった。

なお,2月18日にモデル校としての授業公開が控えているとのこと。

愛和小学校の実践研究の発展

昨日,多摩市立愛和小学校を訪問した。同校は本年度からパナソニック教育財団の特別研究指定校となっており,財団から派遣されている専門委員であるアドバイザーが私である(おそらく,専門委員の中ではもっとも遠くに住んでいると思うのだが・・・)。同校は,児童ひとりに1台のiPad配布を実現している学校であり,今後の1to1 computingを考えていくには,たくさんのヒントが得られる学校である。
訪問の際は,できるだけ他の場面も見て,同校の実態を把握するように努めている。午前中は,各クラスの取り組みをまわって様子を拝見した。iPadがすでに日常的に馴染んでいる印象を受けた。あるクラスでは,ドリル的なアプリの利用は,時間的に減ってきたという。はじめは入りやすいが,そこにとどまっても仕方ない,ということだろう。LEGOやダブルダッチの取り組みも見せていただいた。両者には外部から講師が派遣されている。LEGOは5年生ははじめての取り組みだったというが,みるみるうちに慣れてくる様子が見て取れた。続ければ,かなり高度な取り組みになっていきそうだ。

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午後の算数の研究授業は,正三角形や二等辺三角形の概念を理解するというものであった。あるLMSを活用し,三角形の分け方を検討させ,そのカテゴライズしたものにネーミングをしていくという内容であった。なお,授業参観をしている多くの教師はiPadを持ってきて,同じLMSを活用し,授業の進度に応じて「いいね」「?(改善の必要あり)」のボタンを押して,後の事後検討会のためのデータとしていた(これは前日に発生したアイディアであった)。いわゆる,運勢ライン法による授業評価となっていた。
授業後の検討会においては,表示された各授業場面でのデータに基づいて,数名が意見を出し,議論されていた。取り組み自体に改善の余地があるかも知れないが,授業だけではなくこのような場をしかもICTを活用して実施しようとする前向きな姿勢を評価したいと思う。

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私の授業後の助言としては,協働学習のひとつの型としてはあっても良いと思うが,ひとつのパターンに落とすのではなく,型としては質的に改善を図りつつも,他に探索して欲しいということ,校内研においてはそういう提案性をもった授業にしてほしいということ,今までの授業観にとらわれ過ぎないことも必要であることを指摘したうえで,協働学習について少しお話した。1年目の中盤として,思っていたよりもハードルが高いことを話したように思うが,それは本校に対して期待も持っているということである。これからどのように貼ってしていくのか,楽しみである。
なお,同校の取り組みをご覧になったことがない方には,訪問を是非オススメしたい。11月22日に公開研究会が行われる予定である。
http://schit.net/tama/esaiwa/?page_id=117