「研究」カテゴリーアーカイブ

オーストラリアの学校

icce2004にてオーストラリアに行った折,ひとつの学校を訪問してきた。Apollo Parkways Primary school(http://web.apolloparkps.vic.edu.au/)。コーディネートしてくださった黒上先生@関西大学(http://ks-lab.net/haruo/tours/2004Australia/apss.html),同行メンバーのひとりである中川先生@金沢大学(http://hitorin2.exblog.jp/m2004-11-01/#1380056),次の日に行かれた堀田先生@静岡大学(http://horitan.cocolog-nifty.com/diary/2004/12/20041201.html)がそれぞれ書かれているので参考にされたい。僕が思ったことをシンプルに書くと,ひとつは教室の使い方,掲示物に先生の個性が反映されていて,日本のそれとはまったく異なること,もうひとつは問題解決学習がかなりシステマティックに展開されていることだ。プロジェクト学習が積極的に展開されていて,計画や調べ,まとめの段階で何をすればよいのかと言うことが掲示物にがんがんはってある(ここに示した写真など)。これについては賛否あると思うが,どのような本などを根拠にしているかは調べる必要があると思うし,総合的学習にも役立つ知見がきっと見えると思う。当日は学期末ということで通知表を配布しているシーンを目にしたが,自分がどの学年レベルにいるかが示されていた。2年生であれば,3年生のレベルにすでに達している子もいれば,1年生程度のレベルだということを記録されている子がいるのを想像するとわかりやすい。

当日のメモより

  • 全校で730人
  • 幼稚園からある。20から21人
  • 2年生以上は24人から25人
  • パソコンは4人に1台。教室に6台。高学年はe-mac。アップルスクール。
  • 専科は音楽,体育,芸術(アート),イタリア語,図書
  • ボランティアで母親が指導補助を勤める
  • 人を集めるためのパンフレットがある
  • 新任がきたら,メンターと組ませる
  • Planning Weekというのがある。年間カリキュラムをグループを分けて細かく決める。
  • 年間の訪問者は1200人。
  • 学校選択性を取っている。30%が校区外から。
  • 卒業生は中学校でも成績が良い。
  • NHKの子どもニュースのようなものを見てた。TCCというらしい。
  • 6年生のプロジェクト学習はTo 7 year Teacher。もうすぐ卒業なので,これまでの生活をまとめると言う感じであった。

教育システム若手の会

12月10日から12日にかけて開催される教育システム若手の会(http://cog.ed.shizuoka.ac.jp/yw04/)に参加すると言うことで,申し込みをした。村上さんと行くことにする。メールにてせっかくお誘いをいただいたので。自分のやっていることからすると,わからない話も多いかもしれないけど,勉強させていただこうと思う。

総合的学習における学習活動の構成要素

稲垣君の本を読んでいる途中で,自分の研究もちょっとは紹介していかなければならないと思いました。私の博士論文は

寺嶋浩介(2003) 総合的学習における情報メディア活用に関する研究 博士課程論文(関西大学)(2003年3月31日)

です。これを中心に紹介していきます。総合的学習というと小学校から高等学校の「総合的な学習の時間」をさしますが,大学等での問題解決学習,構成主義的な学習などにも役立つ知見が含まれていると思います。

今回はそのうちでも以下の2点を紹介。

水越敏行・寺嶋浩介・中橋雄・土井大輔(2002) 総合的学習の設計・実施・評価に関する研究 『情報研究(関西大学総合情報学部紀要)』17 pp.51-81.(2002年8月20日)

寺嶋浩介・中橋雄・土井大輔・水越敏行(2001a) 総合的学習における学習活動のタイプ分け 日本教育方法学会 第37回大会(岡山:岡山大学,2001年9月29日)『日本教育方法学会 第36回大会発表要旨』p.45.

以上にまとめられている総合的学習における学習活動のカテゴリーについて紹介します。総合的学習においては学習者中心の学習が望まれるため,学習者の活動をどう構成していくかが重要となります。構成要素は以下のようにまとめられることが実践の分析の中からわかってきています。

  1. 聞く・見る
    1. 外部人材の話を(講話のような形で,広い視野から)
    2. 教師の話を
    3. テレビ・ビデオを
    4. 作品を(先輩の作品,工芸品など)
  2. 出かける
    1. 外部施設に(図書館や地域の施設)
    2. 野外に(川など)
  3. 調べる
    1. 資料を(図書,ホームページなど)
    2. インタビューをして(子どもたちが目的を持って)
    3. 現地で調査をして(例えば川での水の採取,石集めなど)
    4. 実験・体験をして(調査環境を作って,自分たちで体験的にやってみる)
    5. アンケートをとって
  4. 比較考察する
    1. 他の地域と
    2. 昔のものと
  5. 作る・まとめる
    1. メディア作品を(ビデオなど)
    2. 発表用資料を(パワーポイントなどのプレゼンテーション)
    3. 料理を
    4. 伝統品・工芸品を
    5. 手紙を
    6. 作文を
    7. 観察記録を
    8. カード・ポートフォリオ等に
  6. 交流する・話し合う
    1. 対面で他の学校と
    2. メディアを解して他の学校と
    3. 異学年の人と
    4. クラス内で
    5. グループ内で
    6. 対面で外部人材と
    7. メディアを介して外部人材と
  7. 発表・発信する
    1. 発表会で
    2. 学芸会で
    3. ホームページで
  8. 自己評価する
    1. 成果物をもとに
    2. 自分自身の体験を振り返り
  9. 評価・アドバイスを受ける
    1. 外部人材から
    2. 教師から
    3. 友達から
  10. 教科学習を行う
    1. 導入として
    2. 学習に応じて
    3. 成果に基づいて(総合でやったことを教科学習につなげる)

ひとつひとつのカテゴリーを見てみると,ちょっとどうかなと思うところもあるし,(ねらいなく)活動のみを抽出する批判もあると思います。それを踏まえて博士論文にはこれを入れなかったのですが,あえて復活をさせてみました。とりあえず今日はここまで。