反転授業に対する期待がもたらす悪循環サイクル?

先日,篠山市立丹南中学校を訪問した。同校は,昨年度までの2年間,パナソニック教育財団の特別研究指定校であり,反転授業をテーマとしていた。私は財団派遣のアドバイザーとして,何度か足を運んだ。特別研究指定校の期間は終わったので,縁はいったん切れたことになったのだが,今年度も継続して進めるので来てほしい,ということでうかがった。日程としてはもっと早い段階で行く機会を探したのだが実現せず,今回の訪問となった。

公立中学校ながら,反転授業を行う同校は最近Web上にもいくつか出るようになり,興味を持っておられる方も結構多いようだ。財団のページでは,リーフレットが公開されており,それをまず見ることをおすすめしたい。

最近では,その成果が学力的な面にも結びついてきているとのことである。また,日本教育工学協会(JAET)全国大会でもその成果を発表するとのこと。
何度か授業を見たり,その後先生方と議論をしていると,「一般的に言われている反転授業」これをそのまま進めると悪循環が発生するのではないかという仮説をもっている。いわゆる,授業前にビデオを視聴し,知識を習得させた上で対面授業はよりアクティブに・・・という理想が何となく多くの方にはイメージとしてあるのではないだろうか。実際,多くの先生方がそれにトライしようと考える。それはある意味,間違いではない。
それを実際にやってみるとどうなるか。

生徒が確実にわかっていないままで授業に参加
→それを察知した教師がビデオを授業中に再生する「ICT活用授業」がはじまる
→ビデオのできが完全でないために多くの説明で補強しようとするため,かえって時間がかかる
→活動は未消化に
→次をやろうとしても生徒は見てこない→生徒にとってはビデオなんて見てこなくても,授業で見せるので,事前に見なくても良くなる
少々過激な書き方になってしまったが,こんな感じになってしまう可能性をはらんでいる。もちろん,同校では多くの教員が継続して進めているので,そういう経験を乗り越えてきている。

それでは,ある程度反転授業になれた先生方は,ビデオをどのように取り入れているか。
・メッセージがシンプルであること。核心の部分だけ伝える。
・逆にもやもやした感じをもたせた上で,疑問をもたせて対面授業に参加させる。
・授業で何をやるかの見通しをつける。
などというようなバリエーションが出てきているように見える。「多くを求めない」ということが共通点だろうか。結局は授業論に行きつくように思う。

初等中等教育での反転授業は,まだまだ研究の価値があるように思う。結構色んな大学で卒論や修論のテーマにしている人が多いようだ。中学校以上においては,授業改善を考える際に,反転授業についてもっと議論しても良いように思う。実際にどれ位の公立校が取り組んでいるのだろう。